老年内科という特徴的な科目をアピールできる少し重みがあり、落ち着いた雰囲気を持ったクリニックを目指しました。診察室も通常よりゆったりとり、付き添いの方も窮屈さを感じさせないよう配慮しました。また処置室手前の中待合は、クリニック内を一気に移動するのではなく溜まりを作ることにより動作の緩やかな患者さんとそうでない方との診察・待ち時間へのタイムロス軽減といった目的もあり造らせていただきました。

先生が持たれていたクリニックに対するデザインイメージをどうやって機能と動線、そしてローコストという問題に結び付けていくかに苦労しました。
高価な材料を使用すれば誰でも判りやすい豪華な内装は出来上がります。ただ開業時の内装におけるイニシャルコストは出来るだけ抑えた形にし、必要な器機を導入したいという思いと相反します。この間にある妥協点を先生だけに強いるのではなく自らも知恵を絞って向き合っていく事が本当に大切だと、内覧会の時に先生と交わした固い握手に強く思いました。

２日間の内覧会で延べ1200人以上の方々が来院されました。それだけ『老年内科』に対する地域の感心が高いという事に驚かされたのと同時に、お年寄りの方が『孫ではなく私達の病院ね』と言いながら出て行くのを目の当たりにし、あらためて今後の地域医療の大切さを感じます。
その地域医療の発展の為に私達が出来ること、しなければならない事は豪華で綺麗な内装の提案では無く、地域の誰もが安心して訪れる事が出来る環境づくり。
大袈裟かもしれませんが『私達も担う』という意識で取り組んでいます。